沢村凜さんの「黄金の王白銀の王」を読みました!
この小説は二人の王の人生に焦点を置き、覇権争いで力を失った国が立ち直っていく様子を描いた骨太のファンタジー小説です。
上に立つ者の重責を背負い、周囲の反発や自分自身の甘さと戦いながら「なすべきことをなす」二人の王の生きざまはきっとあなたの人生の道しるべになります。
まだ読んでない方にもわかりやすいように、ネタバレなしで面白さのポイントをご紹介します!
この作品は、「大河ドラマを見るような壮大なストーリー」「上に立つ者の葛藤や苦悩を描く作品」「心に残る名言」が好きな人に特におすすめです!
あらすじ・内容紹介
二人は仇同士であった。二人は義兄弟であった。そして、二人は囚われの王と統べる王であった──。翠(すい)の国は百数十年、鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)という二つの氏族が覇権を争い、現在は鳳穐の頭領・穭(ひづち)が治めていた。ある日、穭(ひづち)は幽閉してきた旺廈(おうか)の頭領・薫衣(くのえ)と対面する。生まれた時から「敵を殺したい」という欲求を植えつけられた二人の王。彼らが選んだのは最も困難な道、「共闘」だった。日本ファンタジーの最高峰作品!!(引用:amazon)
主人公は百数十年もの間、国の覇権をめぐり殺しあってきた二つの一族の王「穭(ひづち)」と「薫衣(くのえ)」。
二人はお互いを殺したいほどに憎んでいながら、国を守るため秘密裏に手を組むことを決意します。
目指すのは、二つの一族を一つにし、争いの連鎖を断ち切ること。
しかし、根深い憎しみを抱えた人々にその目的を明かすことはできず、二人の王は孤独な戦いを強いられることになります。
侮蔑の目線や周囲の非難、多くの困難に耐えながら、自分を殺して進んでいく二人がたどり着いた結末とは…
面白さポイント紹介
ポイント1 人の上に立つ王の生きざまと葛藤
この作品で最もお勧めしたいのが、二人の王が責務と感情の間で葛藤しながら前に進んでいく部分です。
物語を通した二人の根本的な行動指針として「なすべきことをなす」という言葉が出てきます。
人々を導く立場である二人には、人間らしい甘えや油断は許されず、「なすべきこと」であったならどれだけ苦しいことでもやらなければなりません。
どうしようもなく湧き上がる感情を抑え、上に立つものとしての振る舞いを必死で貫いていく二人の姿には、物語を通して何度も泣かされます。
最後の最後まですっきりとは報われませんし、二人の功績が理解されることもほとんどありませんが、だからこそ信念を貫き通した二人の生きざまの尊さが胸に染み入ります。
自分の努力が報われなかったり、人に理解してもらえなかった経験がある人であれば、この部分にすごく共感し、勇気をもらうことができると思います。
ポイント2 困難を退ける見事な手腕の爽快感
二人の王は二人とも非常に優秀で、それぞれ異なる突出した才能を持っています。
「穭(ひづち)」は政治力が非常に高く、物事の全体や先を見据えた適切な判断を下していくことで、徐々に王国の政治を自分の望む形へと作り替えていきます。
一方で「薫衣(くのえ)」は、高いカリスマ性を持っており、その力で反乱軍の心を静めたり、外敵を打ち払っていきます。
頭脳型の「穭(ひづち)」と本能型の「薫衣(くのえ)」といった雰囲気でお互いに足りない部分を補いあう二人が見事な手腕で困難を退けていく様子はとても気持ちがいいです。
特に「薫衣(くのえ)」の才能が爆発する、外敵との戦いはこの小説の中でも一番爽快感がある場面ですので、ぜひ楽しんでください。
ポイント3 心温まる奇妙な友情
計画の打ち合わせのため、二人きりで話をする場面はかなり頻繁にあるのですが、そこでだけは二人はただの人間に戻って本音を言い合います。
そのため、会話の場面には二人の関係や気持ちの変化が色濃く表れており、次第に信頼しあうようになっていく様子がよくわかります。
厳しい展開が非常に多い作品であるため、わかりあっていることが伝わってくる二人の会話のシーンは、読者にとってもすごくホッとする場面です。
長い年月をかけて、お互いの存在がどんどん大きくなっていく様子は、とても心温まります。
二人の王の間に芽生えた奇妙な友情が最後に行き着く場所を、ぜひ見届けてください。
最後に
この作品は、ファンタジー作品であるため、子供向けという印象を持つ方もいるかもしれませんが、非常に深く、学ぶところの多い作品です。
また、レビュー等を見ると漢字が読みにくくて登場人物の把握が大変だという意見もありますが、重要な人物はそこまで多くはなく、「穭(ひづち)」と「薫衣(くのえ)」さえ把握できていれば大体理解できますので、ご安心ください。
読めば読むほど二人の王が好きになり、自分の信じた「正しい道」を進む勇気がわく作品ですので、ぜひ読んでみてください。
コメント